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SAI DIARY

リンガル矯正症例

2017年1月31日

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インビザラインにするか、リンガル矯正にするかで悩んで、来院された患者さんです。

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レントゲンを撮ると、小臼歯が埋伏しているし、歯軸がかなりばらついているので、リンガル矯正に

なりました。親知らずの抜歯もしました。

このリンガル矯正中に、結婚して、今、妊娠中で。

ご本人も「この矯正でお世話になっている間に、人生のイベントがたくさんあったわ」と。

妊娠中ですが、体調が良いので、ホワイトニングをしながら、前歯のレジンの詰め合わせを

入れ替えて、もっときれいになる予定です。

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神経を抜いた後、変色してしまった歯を、元の歯の色に戻す処置です。

中から漂白します。

歯並びが気になりますが、患者さんは「色だけで良い」とおっしゃるので、ブリーチだけ。

色が合うだけでも、雰囲気変わりますね。

2万5千円です。

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近所のECCモデルコースの学生の女の子です。

モデルになりたいのなら、歯並びを治してきなさいということで、リンガル矯正(4本抜歯)をしました。

今から、ホームホワイトニングです。

リンガル矯正だと、矯正中も見えないので、オーデションも問題なく受けられます。

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初診時の写真です。転倒して、前歯が折れて、神経が死んで、変色していました。

かわいらしい20代の女性にも関わらず、数か月放置していたようです。

差し歯と分からないくらい隣とソックリなかぶせ物は12万円しますから、「本当にこの歯並びで良いのか?」

「今の歯の色で後悔しないか?」ということを、伺うことになります。

 

ずいぶん前歯2本が飛び出ているので、リンガル矯正をすることになりました。

先日、矯正が終了しました。

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下顎前歯が、先天性欠損で奇数なので、正中は合いません。

あとは、ホワイトニングをして、折れた歯をセラミックに変えていくことになります。

 

開業以来の最大のお買い物といって差し支えないCTスキャンを導入しました。

それをHPで宣伝しなくてはいけないのですが、そういうことは面倒で、ちっとも進みません。

 

ふと気付くと歯医者になって、17年、開業して11年も経っていました。

休まずずっと続けていますが、さすがに、慣れも出てきます。もうそれは難なく出来ると

思うことも増えました。

一方で、もっと詳しく知りたいとか、もっと治療の質を上げたいとか、欲が出てきて、まだまだ

歯科医師を続けるだろうし・・・ということで、ちょっと贅沢をしてしまいました(^^)

 

今まで、見えていなかったものが見つかって、驚きます。

顎骨嚢胞、歯根嚢胞、歯牙腫、過剰歯などなど。

矯正も、3D画像を元に診断すると、非常に安全度が増します。

骨の無いところに歯は動かないので、事前に骨の厚み、歯の角度がそれぞれ分析できるので

患者さんと医師のストレスが少なくなります。

CTとスキャナーと3Dプリンターで出来ることを考えるとワクワクしてしまいます。

 

そして、安いCTと高いCTの差は、画質だけかと思っていましたが、被ばく線量が違うことを

知りました。

歯科業界の価格破壊を起こしているR社のCTは、当院CTの5~6倍の被ばく線量です。

体に優しい機器を選ぶことも大切ですね。

 

CTがあることが云々ではなくて、せっかくCTを撮ったのだから、なるべく多くの情報を

正確に分析し、診断し、伝えたいと思います。

それを、きちんと治す技術も更に向上させていきたいと思った次第です。

 

歯科金属アレルギー

2016年5月30日

5月29日に阪大の臨床談話会にて「歯科金属アレルギー」高永和先生の講演を聞いてきました。

最近、どの講習会も面白くて、なんで学生時代は眠かったのかなと思います。 今なら、研究だって出来そうです。

そんなことはさておき、今回の歯科金属アレルギーの話は、かなり衝撃的な結果がありました。

まず、金属アレルギーと聞くと、普通、接触アレルギーを考えるので、   「口の中に何もないから大丈夫」と言われてしまいます。   実際、ネックレスで首がかぶれたとか、ベルトでお腹がかぶれるとかそういうことを皆さんはまず想像すると思います。

 

ところが、口から肛門までの消化器官は、「経口免疫寛容」といって、この消化管をタンパク質や   大腸菌、悪いもの、良いものなどなど、いろんなものが通過し、そこから栄養を吸収するので   あまり反応しないようになっています。つまり内なる外といった感じです。

口腔内もその一つで、直接、アレルギーの原因となるものに触れても、滅多と症状は出ません。

歯科金属アレルギーは、全身に発症するほうが圧倒的に多いのです。

前回、歯周病のお話をしていましたが、その中で、原因の分らない病気は口を疑えと書きました。

今回は、「アトピー性皮膚炎」について興味深いデータがありました。

アトピーとは、「奇妙な」という意味だそうです。つまりアトピー性皮膚炎とは、奇妙な皮膚炎で   原因がはっきりしません。

2000年の高先生の論文で 阪大歯学部附属病院にて、「アトピー性皮膚炎で治り難い人300人」を対象に、

口腔内の金属を除去した結果を 発表されています。

この難治性アトピーの人は、全員、皮膚科にてきちんと治療を受けているにもかかわらず改善しない人を 対象にしています。

41%がエクセレント 29%がグッド

つまり70%の方は、とても良くなったか良くなっており、アトピーに改善がみられたということです。

 

これを、医科の学会で発表しましたが、「治り過ぎ」という訳の分からない理由であまり受け入れてもらえてない そうですが、もっと歯科医師は、アトピー性皮膚炎へのアプローチをすべきです。

 

アトピーだけでなく、湿疹、乾癬、にきび、掌蹠膿疱症、円形脱毛症(ストレス以外)、化学物質過敏症 の患者に対して、金属を含むアレルギー物質を除去することが、驚くほど有効であることが分かる写真を 数多く見ることが出来ました。

 

去年のブログで、歯科金属アレルギーの患者さんの経過を書きました。   先日、初めての定期検診で来院され、象のようだった手が、跡形も無く女性らしい手になっていて、   大変嬉しく思いました。

初診時                     金属除去から9ヵ月後

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歯科金属アレルギーは全身性接触性皮膚炎で、外せば治る

 

ということが大切です。   そして、金属、ガラス、プラスティック、セメント、仮歯、根充剤、外からは見えない土台も含め、   あらゆるものがアレルギーの原因として考えられます。

絶対大丈夫なものはありませんので、その人にとって大丈夫なものを検査結果から探して、使ってみて 様子をみながら治療していくことになります。

残念ながら、勉強不足で、ただ、見えている金属だけを外して、金属アレルギーの治療をうたっている 医院がたくさんあります。見えない部分も大切なので、みなさんも、もし金属アレルギーの疑いがあれば きちんとした医院を選んで下さい。

バナナやキウイで口の中がイガイガする人は、ラテックスアレルギーだったりします。

これは、「交叉反応」といい、似ている構造に反応してしまうという現象です。   あと、きな粉を食べて、具合が悪くなる人は、絶対、ニッケルアレルギーで、ニッケルで反応すると   そのうち、パラジウムにもアレルギーが出ますので、間違いなく歯科金属アレルギーです。

一つに出てくると、似たものにも反応が出始めるので、怖いですね。

自分が、アレルギー体質で、歯医者になった当時、グローブで手が血だらけになり悩まされたので   しょうもないことで、アレルギーを引き起こしたくないという思いがあります。

どんな、詰め物も異物です。   子供の頃からむし歯ゼロを目指して、子供の教育も頑張っています。

口は臭いだけ?

2016年4月19日

天野教授のお話の最終回です。

 

口が臭い人は、臭いだけなのか?

 

口臭に年齢は関係ありません。ほとんどの口臭の原因は、800種類ほどいる細菌の代謝です。

 

便秘の人が臭いなんてのは、嘘。

糖尿病の人の息は、甘い香りがするのは、本当です。

 

臭い物質は、揮発性硫黄化合物です。

 

・硫化水素は、卵が腐った臭い

・メチルメリカプタンは、野菜の腐った臭い

 

これらは、舌の清掃を怠ると生理的口臭としても臭います。

舌もきちんと磨いてくださいね。

 

ちなみに、p.ジンジバーリスがいると、メチルメルカプタンを発生します。

このメチルメルカプタンは

毒物指定(毒物および劇物取締法)
毒性は青酸ガスに匹敵
細胞毒性・炎症亢進、歯周ポケット内面の治癒を阻害

 

 

怖すぎます。もし口が臭い人がいたら、逃げてくださいね(^^)

 

原因不明の病は口を疑え

口の汚れは万病の元

です。

 

以上、21世紀のペリオドントロジーでした。

 

 

前回、前々回と続いている天野教授の歯周病のお話です。

 

患者さんが「歯茎から血が出る」と申告されることが多々ありますが、これは何が起こっているのでしょう?

 

答え「歯周ポケットの内面が潰瘍になっていて、それを刺激して出血している状態」

 

外ではないです。内面が潰瘍なんですよ!

 

みなさん、簡単に出血って思っていますが、潰瘍です。胃潰瘍と同じ潰瘍です。

 

歯周病菌の大好物はFe鉄です。Feがないと増殖できないし、病原性も高まりません。

Feといえば、赤血球ヘモグロビンが大好物ということ。血がないと仲間を増やせないですが

血があると、桁外れに増殖し、さらに出血を起こし仲間を増やします。

 

プラークは協力して病原性を高めるので、三ヶ月に一度、歯科医院でクリーニングをすることで

バイオフィルムの病原化を防ぐことが大切なのです。

 

 

では、歯周病菌はどうやって潰瘍を作っているのでしょうか?

 

まず、歯周病関連菌が病原性の高いバイオフィルムをつくります。

 

歯周組織を攻撃します。歯周組織は免疫機構を駆使して、サイトカインを放出。

 

ところが、それでも歯周病菌は死なないので、その大量のサイトカインが自分にはね返ってきて

慢性炎症が骨を破壊し始めます。

また、大量のサイトカインが全身を駆け巡るので、いろいろな臓器でトラブルを起こします。

 

大切なのは、出血を止めること

 

触らなければ、血が出ないとかではないですよ。

プスプスと探針でなぞっても、普通にハミガキでゴシゴシしても血が出ない状態です。

 

歯周病の進行は、ポケットを計る時に血が出るかでないかで分かります。

 

定期検診の目的は、原因除去です。

しっかりとポケット内部まで、クリーニングすることが大切です。

歯周病が安定してきても、1年も放置すれば、また細菌は病原性を高めることがあります。

 

受診間隔は、患者それぞれです。

 

1年に一度でも問題ない人もいれば、3ヵ月ごとのクリーニングが必要な人もいます。

細菌検査で、凶悪な遺伝子型の歯周病菌に感染している場合は、短めのリコールになりますね。

 

とある患者さんの数値の変化ですが

 

p.ジンジバーリスが40だったのに、中国へ転勤になり、2年後、11万8000にも跳ね上がって

しまいました。

 

細菌って本当に恐ろしいですね。

 

歯茎の出血を放置するとはどういうことか?

 

それは

 

傷口にウンコを毎日、押し付けている

46時中、菌血症

 

ということです。

 

ウンコって単語が、今でも、わくわくしてしまうので、診療室でも言ってしまう私とスタッフです。

許してくださいね。

 

内面に病原性の物質があるので、丁寧に歯磨きすることはむしろ害になります。

(ちゃんとした)歯科医院で、ポケット内のクリーニングを受けてくださいね。

 

次回は、口臭について。

 

口臭は臭いだけか?のお話です。

前回、前々回に続き、阪大予防歯科学分野教授 天野先生の講演会のお話&私の意見など

 

タイトルの「歯周病菌は追い出せるのか?」ですが、

 

答えは、No! 歯周病菌を追い出すことはできません。

 

ちょっと、胡散臭い歯科医の先生のサイトなどで、「うがいするだけで菌を無くせる」

なんて話を読んだことが有りますが、絶対、嘘。

 

除菌、消毒、殺菌、滅菌という言葉が世の中には溢れていますが、菌を完全になくせるのは

「滅菌」のみ。この滅菌は、どこの病院にもあるであろう「オートクレーブ」か「ガス滅菌」

だけです。

 

滅菌したかったら、121度2気圧で20分の部屋か、ホルマリンガスの部屋に入るしかないので

死んでしまいます。

 

日本には「モンダミン信仰?」みたいなものがまだ、残っていて、患者さんから、マウスウォッシュ

でゆすいでいるから大丈夫ですか?という質問が有りますが、

 

あんまり、意味が無い

 

昔から、歯周病菌に良く効くといわれているCHXグルコン酸クロルヘキシジンで

5分間うがいした場合、ウロウロして浮いている菌には効きますが、歯の表面に

バイオフィルムという形で貼り付いている菌には効かないのです。

 

わかりやすくいうと、唾液中の菌は、5分間うがいし続けたら一旦、消えるけど

3時間もすれば全く元の状態です。

5分間もうがいするなら、3分間、歯磨きしたほうが楽だし、効果がありますよ。

 

ジスロマックという抗生剤を知っている人も多いと思います。

結構、強いタイプの抗生剤です。この抗生剤というのは、菌にとっては毒饅頭のような物で

食べたら死んでしまいますが、菌の中には、休眠中の菌がいるんです。

 

眠っているのですが、死んではいません。

寝てるので、お饅頭は食べないです。毒饅頭を食べて仲間がいなくなったのを感じ取ると

起きてきて、また増殖します。

 

一生、抗生剤を飲み続けることも不可能なので、結局、駆逐できないのです。

 

歯のない人は、もう菌がいないと思っていましたが、間違いでした。

 

歯がない人も、歯茎、舌、頬にいるそうです。菌すごい。。。

 

 

では、一番大切なことは?

「一番大切なのは、歯間ブラシ。歯周病は歯間から」

「マウスウォッシュはあまり意味がありません」

 

では、次は、歯茎からでる血についてのお話です。

 

前回の阪大予防歯科教授 天野先生の講演内容の続きです。

 

歯周病菌はどこからやってきた?

勝手に口の中に沸いて出てきているわけではありません。

唾液を介した経口感染です。

 

親からだったり、親しいお友達だったり。

 

最新の分析では、歯周病関連細菌の種類が明らかになってきています。

その中でも、とっても凶悪なものを Red complex bacteria と名付けて注目しています。

 

p.gingivalis  ジンジバーリス

T.forsythia フォーサイシア

T.denticola デンティコーラ

 

学生の時から、どうやって読むんだよ?!って思っていましたけど、今でもやっぱり読めないし。

 

お口の中には100億個の菌がいます。

 

お尻の近くの直腸も同じくらいかな。 上からも下からも汚いですね。

 

この細菌は、小学生くらいまでは定着せず、大人になってからメンバーが決まってきます。

遅くに出会って結婚した夫婦の細菌の種類を、中年以降に調べたら、まるで他人!だそうです。

 

もし、凶悪なタイプの歯周病菌に感染してしまったら、一生、覚悟しなくてはいけません。

 

1回1~2万円くらいで細菌のDNA検査が可能です。発症診断と予後予測が可能になります。

 

自分が、もしレッドコンプレックスに属する細菌に感染していたら将来は・・・という予測歯科の世界になります。

 

歯を失いやすさを、数値化してみると

タバコは 4.75倍

65歳を過ぎると 9倍

p.ジンジバーリスⅡ型に感染していると 44倍!

p.ジンジバーリスⅣ型に感染していると 13.87倍

 

つまり、p.gingivalis Ⅱ型に感染していて、喫煙する65歳以降の人の歯を失いやすさは

44×4.75×9=1881倍  もう絶望的です。

 

歯医者になって、この世から、タバコは無くなって良いと本気で思っています。

臭いし、歯が黄色くなって汚いし、歯周病は進行して、歯はなくなるし、

肌はさびてカサカサしているし、歯茎も唇も黒いし、鼻毛は伸びるし。

 

以上、タバコを撲滅したいのに、両親の喫煙さえ、止めさせることが出来ていない歯科医師の

ボヤキでした。